NASのデータ復旧|リビルドを押す前に読むページ

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家や事務所に置いた NAS(ネットワークにつないで、複数人・複数の機器から使える保存箱)が読めなくなった。共有フォルダが開かない、本体のランプが赤く点滅している、管理画面がディスクの異常を知らせている。

このページで伝えたいことは 1 つです。交換とリビルドに進む前に、止まってください。

先に結論

NAS では「直そうとする操作」がそのまま失う操作になります。押してはいけないもの、撮っておくもの、見てよい場所の順に並べます。

  • 「リビルド」「修復」「再構築」と書かれたボタンを押さないでください。 NAS のデータを失う原因として、機器の故障より多いのがこの操作です(理由へ
  • ディスクを抜いた場合は、どのスロットに入っていたかを写真に撮ってからにしてください。並び順が分からなくなると、復旧の難度と費用が上がります(理由へ
  • 開けるなら、NAS 自身が持つごみ箱とスナップショットを先に見ます。ここで済むこともあります(探す場所へ
  • 市販の復元ソフトは、この状況では勧めません。 理由は自力で試すと壊れるからで、ソフトの出来とは関係ありません(ソフトを使わない理由
  • 最終的な着地は業者です。渡す前に手元でそろえておくと、見積もりが具体的になります(業者

リビルドを実行してはいけない理由

先に用語を 2 つだけ説明します。専門的な話ではなく、この判断に必要な範囲だけです。

RAID(レイド)は、複数のディスクをまとめて 1 つの保存場所に見せる仕組みです。多くの NAS は、1 台が壊れても中身が読めるように、データを分散して置いています。ディスクが 1 台落ちてもファイルにアクセスできるのはこの仕組みのおかげです。

リビルド(再構築)は、落ちたディスクを新しいものに交換したあと、残りのディスクの内容から計算して新品に書き戻す処理です。正常な機器なら、これで元の構成に戻ります。

問題は、この処理が残ったディスクにとって最も重い作業だということです。

NASのディスクが1台落ちたときに、リビルドを実行した場合としなかった場合 NASのディスクが1台故障した状態から、左の経路は新しいディスクに交換してリビルドを実行する流れで、全台を長時間読み続ける負荷から2台目が落ち、書き戻しによって元の配置が上書きされる。右の経路は電源を切って相談する流れで、今の配置がそのまま保たれる。左へ進むほど戻せなくなり、右は現状のまま止まる。 ディスクが1台落ちた 本体のランプが赤くなる 交換してリビルド 全台を数時間読み続ける 電源を切って相談する 並び順を控えておく 2台目が落ちる 書き戻しで上書きされる 今の配置が保たれる 復旧の材料が残る つい押してしまう 止めるならここ 負荷が引き金 そのまま渡せる
1台落ちた時点で残りのディスクも同じ年月使われている。リビルドはその全台に長時間の読み出しを強いる。

リビルドは、残った全ディスクを端から端まで、数時間から十数時間かけて読み続けます。ここで思い出してほしいのは、それらのディスクは 1 台目とほぼ同じ時期に、同じ環境で、同じだけ使われてきたということです。

1 台が寿命で落ちたなら、他も近い状態にあります。そこへ最大級の負荷をかければ、2 台目が落ちます。2 台落ちた時点で、多くの構成ではファイルが読めなくなります。

さらに、リビルドは書き込みを伴う処理です。書き戻しが始まると、元のデータ配置は新しい計算結果で上書きされていきます。途中で失敗した場合、業者が中身を組み直そうとしても、参照すべき元の状態が半分書き換わっている状態になります。

同じ理由で、次の操作も止めてください。

  • ディスクを抜いて順番を入れ替える。 どのディスクがどのスロットにあったかは、データを組み直すための情報です。抜くこと自体が絶対に駄目なわけではありませんが、抜く前にスロットの並びを写真に撮ってください。 元に戻せなくなった瞬間に、費用も難度も上がります
  • ディスクを 1 台ずつパソコンにつないで中身を見る。 パソコンにつなぐと、OS が「初期化しますか」と聞いてくることがあります。ここで進むと終わります。また、つないだだけで管理情報が書き換わる場合もあります
  • 管理画面の「初期化」「ボリュームの作成」「ファイルシステムの修復」を実行する。 どれも、使える状態に戻すための機能です。データを取り出すための機能ではありません
  • 電源の入れ直しを繰り返す。 ディスクに物理的な問題があるとき、通電のたびに状態が進みます

悪化させずに確かめられること

まだ共有フォルダにアクセスできる、あるいは管理画面が開く。この状態なら、無料でできることがあります。ポイントは、読み出しだけで済む操作に限ることです。

まずやることは 1 つ。読めているファイルを、いま NAS の外へコピーしてください。 全部が無理なら、失いたくないものから順に。この状態がいつまで続くかは分かりません。

そのうえで、次の 3 か所を見ます。

  1. 共有フォルダのごみ箱。 多くの NAS は、共有フォルダごとにごみ箱を持てる設定があり、有効なら削除したファイルはそこに移ります。フォルダ一覧に、ごみ箱を示す名前のフォルダが並んでいないか確認してください
  2. スナップショット。 一定間隔でその時点の状態を記録しておく機能で、対応機種では管理画面から過去の日時を選んで戻せます。ファイルを消した・上書きしたケースでは、これがいちばん速い解決になります
  3. 他の機器への同期。 パソコンやクラウドへ同期する設定を入れていたなら、そちら側に残っています。同期は削除も伝えるので万能ではありませんが、確認する価値はあります

管理画面に届かない場合は、ネットワーク越しに見えるかどうかで状況が変わります。お使いの機器から確認してください。

お使いの環境へ: WindowsMaciPhoneAndroid

Windows 11・10

エクスプローラーのアドレス欄に \\ に続けて NAS の名前か IP アドレスを入れて開きます。ネットワークの一覧に出てこなくても、この方法で届くことがあります。開けたら、そのまま必要なファイルをパソコンへコピーしてください。

「ネットワークパスが見つかりません」と出る場合は、NAS 側のサービスが止まっているか、ネットワークの設定の問題です。ここで NAS を再起動したくなりますが、ディスクの異常が出ている状態では見送ってください。

Mac

Finder のメニューから「移動」を開き、「サーバへ接続」を選びます。smb:// に続けて NAS の名前か IP アドレスを入れて接続します。共有フォルダの一覧が出れば、読み出しは生きています。

接続できない場合、ネットワークの一覧に NAS の名前だけ残っていることがあります。名前が見えることと中身が読めることは別なので、実際に開けるかどうかで判断してください。

iPhone

「ファイル」アプリの右上のメニューから「サーバへ接続」を選び、NAS の名前か IP アドレスを入れます。メーカー製の専用アプリを入れている場合は、そちらのほうが届きやすいことがあります。

写真をまとめて保存していたなら、iPhone 側にも元データが残っていないか確認してください。「写真」アプリの「最近削除した項目」には 30 日残ります。

Android

Files by Google などのファイル管理アプリから、ネットワーク上の保存先として NAS を追加できます。メーカー製アプリがあればそちらでも接続できます。

写真は Google フォトのごみ箱も確認してください。バックアップ済みで 60 日、未バックアップで 30 日残ります。NAS へ移した後に端末から消していた場合、期間内ならここから戻せます。

市販の復元ソフトを勧めない理由

パソコンのドライブや USB メモリなら、市販の復元ソフトで自力で拾い出せます。無料でできる復元の範囲にまとめたとおり、費用をかけずに済む道もあります。しかし NAS では、同じ進め方を勧めません。

理由を挙げます。

ディスクが 1 台では完結していない。 RAID はデータを複数台に分散して記録します。1 台をパソコンにつないでスキャンしても、そこにあるのは断片で、ファイルとして組み上がりません。全台を同時に、正しい並び順と分散の規則で読む必要があります。

NAS の多くは、パソコンと違う形式でディスクを使っている。 Linux 系の形式を採る機種が多く、Windows につなぐと未フォーマットの領域として扱われます。ここで「初期化しますか」に進んでしまう事故が、実際によく起きます。

そして、試行のたびに状態が進む。 ディスクが弱っている状態で、素人の試行錯誤に付き合わせるのが最も危ない。1 回の通電で読めなくなった、という結果が現実に起こります。

NAS 向けをうたう復元ツールも存在しますが、構成を正しく推定できなかった場合に書き込みを行う設定があるものは、失敗が取り返しにつながります。 中に入っているデータの価値が、試行の失敗で失っても構わない範囲に収まらないなら、ここで手を止めるのが期待値の高い判断です。

業者に渡す前に、手元でやっておくこと

NAS の復旧は、ディスク単体の復旧より工程が多く、そのぶん費用も上がります。ただし、手元の情報がそろっているかどうかで、見積もりの精度と作業量が変わります。

依頼の前に、次をメモか写真で用意してください。

  • NAS 本体のメーカーと型番(背面や底面のシールに書かれています)
  • 入っているディスクの本数、メーカー、型番、容量
  • どのスロットに何番目のディスクが入っていたか(抜く前に撮った写真が理想です)
  • RAID の種類(管理画面に表示されていた設定。分からなければ「不明」で構いません)
  • 異常に気づいてから、何をしたか(再起動した回数、交換したか、リビルドを始めたか、何分で止めたか)

最後の項目がとくに大事です。すでにリビルドを走らせてしまった場合でも、隠さず伝えてください。 どこまで書き戻したかで、取れる手段が変わります。

見積もりを受け取ったら、初期診断の費用、復旧できなかった場合の請求、返送料の扱い、そして「成功」の定義を確認します。NAS は「全ファイルは無理だが一部は取り出せた」という結果になりやすく、この場合に何を成功と呼ぶかが事業者ごとに違います。確認の仕方はデータ復旧業者の選び方に 5 項目で整理しました。

依頼すると決めたら、NAS の電源は切ったままにしてください。 待っている間に「もう一度だけ試す」をやると、渡せる状態が悪くなります。

RAIDはバックアップではない

今回のことで一番覚えておく価値があるのは、この一文です。

RAID が守ってくれるのは、ディスクが物理的に壊れたときだけです。誤って消したファイル、上書きしたファイル、ランサムウェアで暗号化されたファイル、NAS ごと落下・水没・盗難。どれも RAID では守れません。むしろ、全台に同じ操作が伝わるぶん、消したものは一瞬で全部から消えます。

NAS の中身を、別の場所にもう 1 つ持つ。 外付けドライブへの定期コピーでも、クラウドへの同期でもかまいません。NAS 自身がバックアップ機能を持っていることが多いので、設定画面を一度開いてみてください。

スナップショットも有効にしておいてください。対応機種なら、誤削除と上書きに対してこれがいちばん効きます。容量を少し使いますが、費用対効果は高いほうです。

ディスクの状態を通知させる設定も入れておきます。管理画面には、自己診断の結果をメールで知らせる項目があります。1 台目が落ちる前の予兆に気づければ、今回のような分かれ道に立たずに済みます。

最後に、同じ時期に買った同型番のディスクだけで組まないこと。製造時期が同じなら、寿命も近い時期に来ます。増設や交換のときに時期をずらすだけでも、2 台同時の故障は起きにくくなります。

よくある質問

すでにリビルドを始めてしまいました。止めるべきですか

進行状況によります。ただ、途中で電源を落とす操作自体もリスクを持つので、判断を先に相談してください。この段階で最もしてはいけないのは、失敗した後にもう一度リビルドをやり直すことです。 1 回目で書き戻された内容の上に、2 回目の計算結果が重なります。止めるか続けるかを含めて、業者に現状を伝えて指示を受けるのが確実です。

ディスクを1台交換すれば直りますか

ランプが赤いだけで、ファイルには問題なくアクセスできる状態なら、それが本来の使い方です。ただし、その前に読めているデータを外へコピーしてください。 交換とリビルドはそのあとです。すでにファイルが読めなくなっている場合は、交換では直りません。

中のディスクを1台だけパソコンにつないで見てもいいですか

勧めません。分散して記録されているため中身が読めない一方で、つないだ側の OS が初期化を促してきます。ここで進むと復旧の難度が上がります。並び順が分からなくなる問題もあるので、抜かずに置いておくほうが確実です。

NASのデータ復旧はいくらぐらいかかりますか

構成、台数、障害の種類で大きく変わるため、このページで金額の目安は出しません。台数が増えるほど、また物理的な故障を含むほど上がる傾向にあります。複数社から見積もりを取り、診断が無料の事業者を選べば、金額を知るところまでは費用をかけずに進められます。


このページの各機能名と保持日数は、冒頭の確認日に Apple・Google のサポート情報および一般的な NAS 製品の管理画面の構成と照合しています。機種によって名称と手順は異なるため、実機の取扱説明書もあわせて確認してください。

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